ブログ一覧

借金の消滅時効援用の苦労話|債権者は今はどこ?探し当てるのは本当に大変です。もし調査を徹底しようと真剣に思えば・・・  (更新日:2019.10.16)

消滅時効は、相手方に対し時効援用の意思表示をしたときに初めて時効による債権消滅の効果が確定的に生じます(民法第145条)。

 

では、消滅時効を援用すべき相手方とは一体どこなのか?

 

『そんなの決まりきっているじゃないか、当然に過去に借金をした会社に決まっているだろう』と、お考えになられる方もいらっしゃると思います。

 

確かに、それはときに正しいこともありますが、ときに正しくないということもあります。

 

いったいどういう意味なのでしょうか。

 

そもそも借金の消滅時効の援用を検討するようなケースでは、少なくとも最後の取引から5年以上の期間が経過していることを意味します。

 

皆様もご存知のとおり、貸金業の業界は、過払い金請求やいわゆるグレーゾーン金利の廃止などもあって、相当数の貸金業者が廃業したり、破綻するなどして姿を消しております。

その際に貸金業者は、保有債権を別の会社に譲渡するということを行ってきました。また、廃業はしていないものの、長期滞納債権を不良債権としてやはり他社に譲渡してしまう会社もありました。

更に業界再編で会社分割や合併が行われて、債権が別会社に承継されたりすることもありました。

 

時の経過もあいまって、過去に借金をしていた会社が、今も債権者であり続けているのかどうかがはっきりせず、債務者自身も現在どうなってるのかを把握できていないケースが多数見受けられます。

 

そのため、消滅時効の援用し債務を消滅させようと思えば、まずは消滅時効を援用すべき相手がどこなのかを調べ上げる必要が出てきます。なぜなら、現在債権者ではない相手に消滅時効を援用しても意味を成さないからです。

 

なお、現在督促状を送付してきている相手方が、現在の債権者だと早計に判断することもできません。最近は実在する会社を名乗って架空請求をしてくる場合もありえるからです。

 

 

では、どのように調べていくのか。

 

債務者の手元に残っている資料を確認させてもらう。

もともとの債権者がどこかを確認します。また、もし債権譲渡がなされている場合には債権譲渡通知という書面が債務者宛に送られていることがあるので、それでもって債権の譲渡先を確認します。また最近届いた請求書があれば、そこが現在の債権者である可能性が高いといえます(但し、架空請求の疑いもありますので、あくまで推測ですが・・・)。

資料がなければ、判明している債権者から譲渡前会社や譲渡後会社の情報を収集します。

 

現在あるいは過去において債権者である可能性のある相手方に取引履歴の開示を請求

この点、現在請求書を送ってきている会社があるのであれば、その会社だけに取引履歴の開示を請求すれば足りるのではと思われかもしれません。現にそのようにされている弁護士や司法書士もいらっしゃると思います。

確かに、現在請求書を送ってきている会社が、過去に借金していた会社から債権を譲り受けていることが間違いないというのであれば何ら問題はないと思います。例えば、過去に借金をしていた会社が、現在請求してきている会社に債権を譲渡したという通知を債務者宛に送ってきていた場合です。

 

しかし、債務者が債権譲渡の通知をもらった記憶がないとか、あるいは何かが送られてきていた気がするが内容を覚えておらず、その書面も紛失してしまって手元にないというような場合であれば、本当に債権譲渡がなされたかどうかがわかりませんので、それを確認するために、元々の債権者にも基本的に履歴開示をお願いするなど連絡をとるようにしております。そうすれば、もし債権譲渡がなされていれば、その旨の回答をしてくれる会社もあります。

 

ところで、あさひ司法書士事務所で取り扱った中で、実際にあったのが、債権譲渡が実に4回(過去と現在を含めて債権者が5社も登場)もなされていたケースがありました。債権譲渡が多ければ多いほど調査は当然大変になっていきます。

 

債権譲渡の事実を確認すべく、過去の債権者も調査する必要が生じますが、相当な時間が経過していることもあり、当時の会社所在地に手紙を送ったり電話を掛けたりしても応答がなかったりすることもあります。その際は会社の商業登記簿謄本まで調査して実在の有無を調べたり、移転先を追跡したりすることもあります。時には、登記簿上の会社代表取締役の自宅に宛てて手紙を送る場合もあります。

 

もちろん、それでも連絡がつかなかったり、手がかりなく調査の続行が困難になってしまうこともありますが、それでもできる限りの調査はするようにしています。

 

安易に依頼者に、「連絡付きませんでしたので、業務終了します。」とか、「現在の債権者(当初借りていた会社と異なる会社)と称する業者に時効援用通知を送るだけ」というような対応はとらないようにしています。

 

消滅時効の援用手続きのために、正直ここまでする事務所も珍しいのかもしれません。というのも、過去の債権者に債権譲渡を本当にしたのかと聴取すると、過去の債権者からは、そこまで調査してくる先生は今までいませんでしたよと言われてしまうこともしばしばですので・・・。

 

しかし、あさひ司法書士事務所では、現在請求してきている会社が架空請求をしている可能性も否定はできませんので、より慎重をきして依頼者に不利益が及ぶ可能性を極力減らす努力を惜しまないようにしております。たとえ手間が増えたとしても・・・。

 

消滅時効を援用するといっても、どこまやるかによって大変さは全然違います。

 

その意味で、消滅時効の援用は、どこの事務所に頼んでも、やることは同じだとは限らないので、くれぐれもご注意下さいね。

 

 

あさひ司法書士事務所

司法書士久保正道

 

 


 

 

あさひ司法書士事務所は、大阪を中心に主に近畿圏(大阪・兵庫・京都・奈良・和歌山・三重・滋賀など)の方からのご相談・ご依頼をお受けしております。

 

消滅時効の援用・過払い金請求・任意整理・自己破産・個人再生を含む債務整理業務に特化して12年以上のキャリアをもつ司法書士久保正道が受付から面談・交渉、業務終了まで直接皆様の担当をさせて頂きます。

 

あさひ司法書士事務所は相談無料ですので、相談をご希望の皆様はこちらをクリックしてお問合せ(メール・電話)ください。

 

 

 

 

 

 

 

一覧に戻る


このページの先頭へ